カフェを開くとき、内装やメニューと同じくらい悩むのが店内のBGMです。
ところが「いつも聴いているYouTubeやサブスクをそのまま流せばいいか」と考えると、ここに落とし穴があります。
店舗BGMとは、お店のなかで、来店したお客さんに聞こえる形で流す背景音楽のことです。
個人で聴くのとは違って、流す前に「著作権の手続き」と「再生に使うサービスの利用規約」の2つを確認する必要があります。
この記事では、カフェや飲食店でBGMを流す方法を、JASRACの案内と各サービスの規約の原文をもとに整理しました。
料金の額はお店の広さや契約で変わるので、ここでは扱わず、最後に問い合わせ先をまとめています。
お店でBGMを流す前に確認する2つのこと
お店でBGMを流すときに確認するのは、性質の違う2つのルールです。
ひとつは曲を作った人の権利(著作権)で、もうひとつは音源を再生するサービスとの約束(利用規約)です。
著作権のほうは、法律の話です。
著作権法では、CDなどの録音を再生して人に聞かせることも「演奏」に含まれると定められていて(著作権法 第2条第7項)、お店でのBGMはこの演奏にあたります。
そのため、管理団体が管理している曲を流すなら、原則として手続きが要ります。
利用規約のほうは、契約の話です。
YouTubeや音楽サブスクは、個人が楽しむための利用を前提に規約を作っていることが多く、著作権の手続きを済ませても、それだけでサービスをお店で使ってよいことにはなりません。
この2つは窓口も中身も別なので、片方だけ確認して安心しないのがコツです。
JASRACへのBGM利用の手続き
日本で多くの曲の著作権を管理しているのがJASRAC(日本音楽著作権協会)です。
JASRACは、店舗や施設でCDや音楽プレーヤーなどを使って背景音楽を流す場合を、BGMの手続きの対象として案内しています(JASRAC よくあるご質問)。
継続的にBGMを流す施設は、JASRACのBGM利用の案内ページから個人向けと法人向けのオンライン申請ができます。
一方で、手続きが要らないケースもJASRAC自身が挙げています(JASRAC よくあるご質問)。
カフェや飲食店に関係しそうなのは次の3つです。
- BGMサービスの利用:JASRACの音源提供事業者一覧に載っている事業者のBGMサービスを使っている場合
- 放送をそのまま流す:テレビやラジオの放送を流す場合(インターネットラジオは原則として手続きが必要)
- 従業員向けだけのBGM:会社や工場で従業員のために流す場合
3つ目は、お客さんが入るカフェの客席には当てはまりません。
バックヤードだけで流す音楽と、客席に聞こえる音楽は分けて考えてください。
従業員向けのBGMについてはオフィスBGMの記事で詳しく書いています。
なお、JASRACが管理していない曲もあります。
日本にはJASRAC以外にも著作権を管理する事業者があり(たとえばNexTone)、管理団体に預けず権利者が自分で管理している曲もあります。
流したい曲がJASRACの管理曲かどうかは、JASRACの作品検索(J-WID)で調べられます。
YouTubeや音楽サブスクをお店で流せるか
お店のBGMで一番よく聞く疑問がこれです。
結論から書くと、主要サービスの規約は、どれも個人的な利用を前提にした書き方になっています。
YouTubeの利用規約は、制限事項として「本サービスを個人的、非営利的な用途以外でコンテンツを視聴するために利用すること」を挙げ、例として「不特定または多数の人のために、本サービスの動画を上映したり、音楽をストリーミングしたりすること」を示しています。
Spotifyの利用規約は、サービスとコンテンツを「個人利用および非商業利用」する許可を与える形です。
Apple Musicを含むApple Media Servicesの利用規約にも、利用は個人利用および非商用利用に限られる旨が書かれています。
JASRACも、BGMの案内ページで「サブスクリプション(登録会員向け聴き放題)サービスは、個人的な利用に限定されている場合があります」と注意を促し、お店で使う前に各サービスの規約を確認するよう書いています(前掲のBGM利用の案内ページ)。
つまり、JASRACに申請しても、個人向けのアカウントでお店のBGMを流す使い方が規約上認められるわけではありません。
規約の解釈で迷ったら、自分で判断せず各サービスの窓口に問い合わせるのが確実です。
市販のCDはどうでしょうか。
JASRACの案内では、市販のCDをそのまま再生する場合は、BGMの手続き(著作権)だけで足ります。
ただ、CDや配信で買った音源を別の媒体にコピーして流す場合は、複製の許諾に加えて、レコード会社や演奏者が持つ権利(著作隣接権)の許諾も別に必要だとされています(前掲のBGM利用の案内ページ)。
「買ったCDをUSBメモリに入れて流す」は、この後者に入ります。
店舗向けBGMサービスと「著作権フリー」音源
手続きをまとめて片付けたいなら、店舗向けのBGMサービスを使うのが近道です。
有線放送や店舗向けの配信サービスのうち、JASRACと契約している事業者は音源提供事業者一覧で公開されていて、ここに載っている事業者のサービスで流すなら、お店側のJASRACへの手続きは不要です。
契約を検討するときは、この一覧に載っているかを最初に確認すると、話が早く進みます。
もうひとつの選択肢が、「著作権フリー」や「ロイヤリティフリー」をうたう音源です。
この言葉は、著作権そのものがない状態を指すことは少なく、「決められた条件の範囲なら追加の使用料なしで使える」という意味で使われることが多い言葉です(これは編集部の経験則です)。
なので、使う前に配布元の規約で次の点を確かめておくと安心です。
- 店舗のBGMとしての利用が、許可された用途に入っているか
- クレジット表記など、利用の条件がついていないか
- 曲が管理団体に預けられていないか(預けられていれば、別に手続きが要ることがある)
音源を配信する側から見た注意点
この記事を書いている編集部は、運営元のレーベルでカフェBGMの楽曲制作と配信に携わっています。
音源を出す側の立場から伝えたいのは、曲のタイトルと、その曲を再生するサービスの規約は別物だということです。
カフェBGM系の作品には、アルバム名に「店内BGM」「店舗用」といった言葉が入っているものがよくあります。
これは「お店の空間に合う雰囲気の音楽」という内容を伝える名前で、個人向けのサブスクやYouTubeで再生したときのルールまで変えるものではありません。
サービスで再生する以上、そのサービスの規約が適用されるからです。
特定のアーティストの曲をお店で使いたいときは、そのアーティストや配信元に直接問い合わせるのが一番確実です。
権利者側が店舗向けの提供方法を用意している場合もありますし、用意がない場合も、使ってよい範囲を権利者本人に確かめられます。
カフェや飲食店のBGMの選び方
手続きの道筋が決まったら、次は選曲です。
カフェや飲食店のBGMは、お客さんの会話の背景になる音楽なので、主役にならないことを第一に選ぶと外しにくくなります(ここは経験則です)。
- 歌詞なしを基本にする:歌詞は言葉なので、お客さんの会話や読書と注意を取り合いやすい。インストのジャズやボサノバ、ピアノが定番になっているのはこのため
- 時間帯で切り替える:朝は軽めのアコースティック、ランチは明るいボサノバ、夜は落ち着いたジャズのように、営業時間ごとに系統を変える
- 会話が普通にできる音量にする:スピーカーに一番近い席で、向かい合った人と声を張らずに話せるかを目安にする
音量の決め方はBGMの音量の記事に、昼営業向けの選曲はランチBGMの記事にまとめています。
美容室やサロンのように会話と施術が中心のお店は、美容室BGMの記事のほうが事情に合うはずです。
実際に聴くなら
ここからは、お店の選曲の方向性を決めるときに参考になる音楽を4つ紹介します。
ここで紹介するのは個人で試聴するための入口で、お店で流すときは、前半で書いたとおり規約と手続きを確認した方法で、同じ系統の音楽を選んでください。
1. Relax Music Lounge
「レストランの店内ならこういう音」という方向性を確かめたいときの見本になる動画です。
タイトルは「Restaurant Ambience Music – Cozy Restaurant BGM」で、ラウンジやディナー向けのインストジャズを約3時間まとめています。
夜にディナー営業をするお店なら、BGMの系統を決める参考になります。
2. おしゃれカフェおすすめ作業用BGM
カフェの開業準備で、客席の空気をイメージするのに使いやすいアルバムです。
アルバム「In-Store Background Music That You’d Expect to Hear in a Stylish Cafe.」(日本語題は「センスいいカフェで流れてそうな店内BGM」)は全20曲で、おしゃれなカフェの店内を想定した選曲です。
3. Creamy Panda
ボサノバ寄りのゆったりした空気をお店の軸にしたい人向けの1枚です。
アルバム「Cafe Time Best Playlist – Stylish BGM for Shops and Home」は全10曲で、タイトルどおりお店と自宅の両方を想定したカフェタイムのプレイリストになっています。
4. カフェ音楽おすすめ
カフェとビストロの中間のような、食事も出すお店の選曲を考えるときに合うアルバムです。
「Calm Cafe Lounge for Cafe & Bistro」は全10曲で、タイトルにカフェとビストロの両方が入った、落ち着いたラウンジ系の構成です。
店舗BGMのよくある質問
Q. 個人経営の小さなカフェでも、BGMの手続きは必要ですか?
A. JASRACが手続き不要として挙げているケースに、お店の広さや規模を条件にしたものはありません。
挙がっているのは、音源提供事業者のBGMサービスを使う場合や、テレビやラジオの放送をそのまま流す場合などです(前掲のJASRACのFAQ)。
自分のお店がどれに当たるかは、JASRACのBGM利用の案内ページで確認できます。
Q. JASRACに申請すれば、YouTubeをお店で流せますか?
A. JASRACの手続きと、YouTubeの利用規約は別の話です。
YouTubeの規約は、不特定または多数の人のために動画を上映したり音楽をストリーミングしたりすることを制限していて、JASRACも各サービスの規約を確認するよう案内しています。
お店で流す音源は、規約で認められた方法から選んでください。
Q. 著作権フリーの音源なら、何も確認せずに使えますか?
A. 配布元の規約は確認したほうが安全です。
「著作権フリー」は「条件の範囲なら追加の使用料なしで使える」という意味で使われることが多く、店舗での利用が対象に入っているか、クレジット表記などの条件がないかは、配布元ごとに違います。
Q. ライブ配信で流すBGMにも同じルールが当てはまりますか?
A. 配信は、お店のBGMとは手続きの種類も、関わるプラットフォームのルールも違います。
作業配信でBGMを流すときの注意点は、配信でBGMを流すときの著作権の記事にまとめています。
迷ったときの問い合わせ先
お店のBGMは、著作権の手続きと再生するサービスの規約の2つをそろえて初めて安心して流せます。
判断がつかないときは、内容ごとに次の窓口へ問い合わせるのが確実です。
- 著作権の手続き:JASRACのBGM利用の案内ページ(JASRAC以外が管理する曲は、その管理事業者や権利者)
- サービスの規約:YouTube、Spotify、Apple Musicなど、使いたいサービスのヘルプや問い合わせ窓口
- 店舗向けBGMサービス:音源提供事業者一覧に載っている各事業者
- 特定のアーティストの曲:そのアーティストや配信元
選曲の方向性を探すなら、コーヒーショップBGMの記事やカフェBGMアーティスト一覧も参考にしてください。
この記事を書いた人
Cafe BGM Playlister 編集部
カフェBGMと作業用BGMの専門メディア「Cafe BGM Playlister」の編集部です。
運営元のレーベルでカフェBGMアーティストの楽曲制作と配信に携わっていて、この記事で紹介したアーティストの一部も当レーベルの所属です。
選曲は、収録曲や再生時間、公開されている情報を編集部が確かめたうえで選んでいます。
