40Hzガンマ波で集中できる?MIT研究と作業用BGMの実際

40Hzの音とは、1秒間に40回のリズムで鳴ったり音量が揺れたりするように作った音のことで、脳波のうちγ波(ガンマ波)と呼ばれるおおむね30〜100Hzの帯域に合わせてあります。
MITの研究で注目されたのをきっかけに、「40Hzで集中力アップ」とうたう作業用BGMが一気に増えました。

ただ、その研究で調べていたのは集中力ではなく、アルツハイマー病のモデルマウスの脳でした。
この記事では、γ波と40Hzの関係、「40Hzの音」と呼ばれているものの中身、研究で分かったことと分かっていないことを順番に確かめて、作業用BGMとして試すときの付き合い方までまとめました。

γ波と40Hzはどういう関係なのか

脳波は揺れの速さごとにδ波、θ波、α波、β波、γ波と呼び分けられていて、γ波はそのなかでいちばん速い帯域です。
範囲はおおむね30〜100Hzとされ、なかでも40Hz前後がよく研究されてきました(Gamma wave – Wikipedia)。
脳波の帯域そのものの説明はα波音楽の記事にあるので、ここでは40Hzという数字に絞ります。

40Hzと音の結びつきは、実は40年以上前から知られています。
Galambosらは1981年、音を1秒間に40回前後の速さでくり返し鳴らすと、頭の表面で測った脳の反応が重なり合って、40Hzの安定した波としてはっきり記録されることを報告しました(Galambos, Makeig & Talmachoff, 1981)。
同じ論文で聴力検査への応用が提案されたくらい、安定して出る反応です。

ただし、「40回/秒の音に脳が40Hzで反応する」ことと「その反応で頭がよく働く」ことは、まったく別の話です。
前者は1981年の時点で確かめられていますが、後者はこの記事の後半で見るとおり、いまも確かめている途中です。

「40Hzの音」と呼ばれているものは3種類ある

YouTubeや配信サービスで「40Hz」と付いた音源を見ていくと、中身はだいたい次の3つに分かれます。
どれも同じ「40Hz」という看板ですが、音の作り方も、研究との距離もかなり違います。

  • 40回/秒でくり返す音:短いクリック音を1秒に40回鳴らしたり、ふつうの音の音量を1秒に40回揺らしたり(振幅変調)したもの。MITの研究で使われたのはこのタイプです。モノラルビートやアイソクロニックトーンと呼ばれる音源もここに入ります
  • 40Hzのバイノーラルビート:左右の耳に40Hzだけ高さの違う音を流すもの。ヘッドホンが前提です
  • 40Hzの高さの音:1秒間に40回振動する、ブーンという低い音そのもの

1つ目は、ふつうのスピーカーでも成り立ちます。
国内でも、テレビの音声に40Hzの振幅変調をかけるスピーカーを使った研究が、塩野義製薬とピクシーダストテクノロジーズから発表されています(ASCII.jp、2024年5月)。
この研究は、自宅で聴き続けられるかを確かめるのが主な目的で、認知機能への効果は今後の発表を待つ段階とされています。

2つ目のバイノーラルビートには、40Hz特有の弱点があります。
バイノーラルビートの記事で書いたとおり、左右の差がうなりとしてはっきり聞こえるのはおおむね30Hzまでで、40Hzはその外側です。
そのため、40Hzのバイノーラルビートが研究の「40回/秒の音」と同じように脳に届いているのかは、音源のタイトルだけでは判断できません。

3つ目の40Hzの高さの音は、研究で使われた刺激とは別物です。
人の耳はおおむね20Hzまでの低い音を聞き取れるので、40Hzは一応聞こえる高さですが、これは「1秒間に40回振動する低音」であって、「1秒間に40回くり返す音」ではありません。
α波の8〜12Hzがそのままでは聞こえないという話はα波音楽の記事にまとめています。

MITの研究で分かったこと

40Hzブームの出発点は、MITのLi-Huei Tsaiらのグループによる一連の研究です。
対象は、アルツハイマー病に似た変化が起きるように遺伝子を操作したマウスでした。

最初の報告は2016年で、1秒に40回点滅する光を見せたマウスでは、視覚を担う脳の領域でアミロイドβ(アルツハイマー病で脳にたまるタンパク質)が減りました(Iaccarino et al., 2016)。
2019年には音でも同じことを試していて、1秒に40回くり返す音を1日1時間、7日間聴かせたマウスで、聴覚の領域と記憶にかかわる海馬のアミロイドβが減り、迷路などの記憶課題の成績も上がりました(Martorell et al., 2019、MIT News)。
光と音を組み合わせたときにだけ、前頭前野でもアミロイドβが減ったことも報告されています。

2024年には、なぜ減るのかを調べた研究も出ました。
光と音の40Hz刺激で、脳の中を流れる液体の出入りが増え、それが老廃物を流し出す仕組み(グリンパティック系)を通じてアミロイドβの除去につながっている、という説明です(Murdock et al., 2024)。
「40Hzで脳のお掃除」という宣伝文句は、この研究から来ていると考えられます。
なお、この論文には、Tsai氏らがこの技術を製品化する企業Cognito Therapeuticsの共同創業者であるという利益相反の記載があります。

人での研究もはじまっています。
軽度のアルツハイマー型認知症の患者15人に、40Hzの光と音を毎日3か月使ってもらった小規模な試験では、本物の刺激を受けた8人では、脳の萎縮の目安になる脳室の広がりが、偽の刺激を受けた7人より小さかった、という結果が出ました(Chan et al., 2022)。
ただ、この試験の主な目的は安全に続けられるかの確認で、一般的な認知機能のテストでは差が出ていません。
著者ら自身も、人数の少なさを限界として挙げています。

規模を大きくした試験も進んでいます。
Cognito Therapeuticsは、670人規模の臨床試験(HOPE試験)の参加者登録を2025年に終え、主な結果を2026年半ばに出す見込みと発表していました(BioSpace)。
この記事を書いている2026年10月の時点で、編集部では結果の公表を確認できませんでした。

反対の結果と、研究からはまだ言えないこと

40Hzの研究には、はっきり反対の結果も出ています。
ニューヨーク大学のBuzsákiらは2023年、同じようなモデルマウスに40Hzの点滅光を見せましたが、海馬などの深い領域ではもともとのγ波が40Hzに引き込まれず、アミロイドβの減少も確認できなかったと報告しました(Soula et al., 2023)。
マウスが40Hzの点滅光を避けるようにふるまったことも書かれています。
この研究は光の刺激だけを調べたもので、音の結果を直接否定したわけではありませんが、MITの結果がそのまま再現されるとは限らないことは示しています。

そのうえで、ここまでの研究から言えないことを書き出すと、こうなります。

  • 健康な人の集中力が上がる:MITの研究の対象はモデルマウスと患者で、作業や勉強の集中力は調べていません
  • 認知症を予防できる:人での結果は小規模な試験にとどまり、大規模な試験の結果はまだ確認できていません
  • YouTubeの40Hz音源でも同じことが起きる:研究の刺激は音の高さや音量、くり返しの形まで決めて作られています。概要欄にそこまで書いてある音源は、ほとんど見当たりません

記憶の不安や物忘れが気になる場合は、音源で何とかしようとせず、医療機関に相談してください。
40Hzの音は、いまのところ診断や治療の代わりになるものではありません。

「集中力が上がる」は研究のどこから来ているのか

では、作業用BGMの「40Hzで集中」という看板には、どんな研究があるのでしょうか。
健康な人に40Hzの音を聴かせて頭の働きを調べた研究はありますが、結果は割れています。

前向きな結果の例が、タイの研究グループによる2017年の実験です。
40Hzのバイノーラルビートを20分聴いたあと、単語を覚える課題で思い出せる語数が聴く前より増え、気分の質問票にも変化が出ました(Jirakittayakorn & Wongsawat, 2017)。
ただ、論文の要旨で示されているのは聴く前と後の比較で、無音や別の音と比べた結果ではありません。

反対に、効果が出なかった実験もあります。
2022年の実験では、健康な31人に10Hz、16Hz、40Hzのバイノーラルビートと、比較用の音、無音をそれぞれ8分ずつ聴いてもらい、記憶や注意の課題を比べました(Rakhshan et al., 2022)。
40Hzでは、記憶の課題にも反応の速さにも目立った効果は出ず、わずかな効果が見られたのは10Hzの条件だけでした。

γ波のバイノーラルビートで注意課題の成績が上がった2025年の実験もありますが、条件の組み合わせしだいで結果が変わっていて、その中身はバイノーラルビートの記事で紹介しています。
こうして並べると、「40Hzで集中力が上がる」は、患者とマウスの研究の注目度と、健康な人での割れた結果をつなげた宣伝文句、と読むのが正確です。
「試すのは自由だけれど、効くとは言い切れない」というのが現時点での距離感になります。

実際に聴くなら

40Hzを掲げた音源のなかから、作業や勉強に使いやすいものを4つ選びました。
上で見た3種類のどれにあたるかを添えておくので、ヘッドホンが要るかどうかの目安にしてください。

Study Sonic Focus

  • 40Hzバイノーラルビート
  • 淡々とした電子音
  • 2時間の勉強に

40Hzの作業用BGMを探すと真っ先に出てくる定番が、2023年公開で再生回数2,300万回を超える「Intense Study – 40Hz Gamma Binaural Beats to Increase Productivity and Focus」です。
タイトルどおりバイノーラルビートなので、左右がちゃんと分かれるヘッドホンかイヤホンで聴くタイプです。
概要欄には「勉強の10分前から聴く」といった使い方も書かれていますが、効果の説明は作り手の宣伝として読んでおきましょう。

Gamma Focus Flow

  • 40Hzバイノーラルビート
  • メロディなしの持続音
  • 90分の集中ブロックに

時間で区切って作業したい人向けなのが、90分きっかりの「90-Minute Deep Work Sprint | Ultra Deep Concentration & 40Hz Gamma Waves」です。
概要欄のタイムスタンプによると、最初の1分半が準備、1時間25分からは音がゆるやかに落ち着いていく構成で、終わりが近いことが音で分かります。
ヘッドホン必須とあわせて「音量は30〜40%くらい」と小さめを勧めていて、医療の代わりではないという注意書きも付いています。

Lotus Verse

  • ローファイ+ブラウンノイズ
  • ざらっと落ち着く
  • スピーカーで流す作業に

ヘッドホンなしで40Hzを試したいなら、「【集中 音楽】 40 Hz ガンマ波 + ブラウンノイズ – 勉強用BGM, 作業用BGM, LoFi Music」が候補になります。
概要欄によると、バイノーラルビートではなく、ヘッドホンの要らないモノラルビートで40Hzを入れていて、上の分類でいう1つ目のタイプです。
ローファイの曲に低めのざわざわしたノイズを重ねた約3時間半で、効果を保証するものではないと概要欄で断っているところも誠実です。
ブラウンノイズそのものについてはノイズの色の解説にまとめています。

Brain Trance Labs

  • γ波バイノーラルビート
  • 穏やかな曲名が並ぶ
  • 20分の試し聴きに

いきなり2時間の動画はちょっと重い、という人は、アルバム「Gamma Waves – Binaural Beats for Focus, Memory, and Study」で短く試すのが手軽です。
「Binaural Calm」「Binaural Quiet」など2分ほどの曲が10曲、全部で20分ほどなので、作業の前に一度流して、合うかどうかを確かめる使い方ができます。
ジャンル表記はインストゥルメンタルで、こちらもバイノーラルビートなのでヘッドホンで聴いてください。

40Hzの音を作業用BGMとして試すときのコツ

効くとは言い切れない以上、40Hzの音は「自分に合うかを試すBGMのひとつ」として扱うのがちょうどいいと思います。
試すなら、次の点を押さえておくと失敗しにくくなります。

  • 音源の種類を確かめる:タイトルや概要欄でバイノーラルビートかどうかを見ておきましょう。バイノーラルならヘッドホン、モノラルビートやアイソクロニックトーンならスピーカーでも成り立ちます
  • 音量は小さめにする:大きな音のほうが効くという結果は、この記事で見た研究には出てきません。くり返しの強い音は長時間だと耳に残りやすいので、会話の邪魔にならない程度で十分です
  • ふだんのBGMと比べる:同じ作業を40Hzの音源とふだんのBGMで数日ずつやってみて、違いを感じなければ無理に続ける必要はありません(ここは編集部の経験則です)
  • 気になったらすぐ止める:一定のリズムがずっと続く音なので、かえって気が散る人もいるはずです。頭が痛くなったり落ち着かなくなったりしたら止めましょう

歌詞のある曲より歌詞なしのほうが読み書きの邪魔をしにくい、という結果はγ波と関係なく出ています。
40Hzの音源はほとんどが歌詞なしなので、その意味では作業向きの側に入りますが、それは40Hzの効果とは別の話です。
BGMと作業の関係を研究から整理した話は作業用BGMの効果の記事にまとめています。

40Hzガンマ波のよくある質問

Q. 40Hzの音とγ波はどう関係していますか?

A. γ波は脳波のうちおおむね30〜100Hzの帯域で、40Hzの音はその帯域に合わせて1秒間に40回くり返すように作った音です。
音を1秒に40回前後のペースで鳴らすと脳が40Hzで反応することは、1981年から知られています(前掲のGalambos et al., 1981)。
ただし、その反応で頭の働きがよくなるかは、まだ確かめられていません。

Q. 40Hzの音を聴くと集中力が上がりますか?

A. 言い切れる根拠は確認できませんでした。
MITの研究の対象はアルツハイマー病のモデルマウスと患者で、健康な人の集中力は調べていません。
健康な人での実験は、思い出せる単語が増えた例(前掲のJirakittayakorn & Wongsawat, 2017)と、効果が出なかった例(前掲のRakhshan et al., 2022)に分かれています。

Q. 40Hzの音で認知症を予防できますか?

A. 現時点では、そう言える段階ではありません。
マウスでは前向きな結果と反対の結果の両方があり、人では15人の小規模な試験で、主な目的は安全性の確認でした(前掲のSoula et al., 2023、Chan et al., 2022)。
物忘れや認知機能が気になるときは、音源に頼らず医療機関に相談してください。

Q. 40Hzの音源はヘッドホンで聴く必要がありますか?

A. 音源の種類によります。
40Hzのバイノーラルビートは左右の耳に別々の音を届けて初めて成り立つので、ヘッドホンが必要です。
1秒に40回くり返すタイプ(モノラルビートやアイソクロニックトーン)は、スピーカーでも同じ音が届きます。

40Hzの看板との付き合い方

40Hzの音は、脳が反応すること自体は古くから確かめられていて、病気の研究としては実際に臨床試験が進んでいる、まじめな研究テーマです。
一方で「40Hzで集中力アップ」は、その研究から一歩も二歩も先を言っています。
看板に期待しすぎず、歌詞なしの作業用BGMのひとつとして、合えば使う、合わなければやめる、くらいで付き合うのがいいと思います。

脳波をうたう音源のほかの話は、バイノーラルビートの記事とα波音楽の記事で検証しています。
脳波にこだわらず集中用の音を探すなら集中用BGMの記事や勉強用BGMのおすすめ、アーティストから探すならカフェBGMアーティスト一覧もどうぞ。

この記事を書いた人

Cafe BGM Playlister 編集部

カフェBGMと作業用BGMの専門メディア「Cafe BGM Playlister」の編集部です。
運営元のレーベルでカフェBGMアーティストの楽曲制作と配信に携わっていて、この記事で紹介したアーティストの一部も当レーベルの所属です。
選曲は、収録曲や再生時間、公開されている情報を編集部が確かめたうえで選んでいます。

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