α波の音楽に効果はある?研究で検証、勉強BGMの使い方

YouTubeや音楽アプリで作業用BGMを探していると、タイトルに「α波」と付いた曲がやたらと目に入ります。
「聴くだけでα波が出る」「α波で集中力アップ」と書いてあると、ちょっと気になりますよね。

α波(アルファ波)とは、脳波のうちおおむね8〜12Hzの帯域のリズムのことで、目を閉じて力を抜いた、起きている状態のときに後頭部で強く記録されます。
この記事では、α波そのものの正体と、「α波が出る音楽」という宣伝の中身、研究で言えることと言えないことを順番に確かめて、最後にリラックス用BGMとしての現実的な使い方をまとめました。

α波とはどんな脳波か

脳の電気活動を頭の表面から記録したものが脳波(EEG)で、その揺れの速さ(周波数)ごとにδ波、θ波、α波、β波、γ波と呼び分けています。
α波はこのうち1秒間に8〜12回ほど揺れる帯域で、人間で最初に記録された脳のリズムでもあります。
ドイツの精神科医Hans Bergerが1929年に最初の報告を出したことから、「ベルガー波」とも呼ばれます(Alpha wave – Wikipedia)。

α波がいちばんはっきり出るのは、目を閉じて、起きたまま力を抜いているときです。
目を開けると弱まり、眠ってしまっても弱まります(前掲のAlpha wave – Wikipedia)。
「α波=リラックスの脳波」というイメージは、この性質から来ています。

ただし、α波はリラックスしたときだけに出るわけではありません。
Klimeschの2012年のレビューでは、短期記憶の課題で覚えた内容を保持している間に、覚える量が多いほどα帯域の活動が強まる、という結果が紹介されています(Klimesch, 2012)。
このレビューは、α波を「いま使っていない脳の領域を抑える働き」と結びつけて説明しています。
記憶の課題に頭を使っている最中にもα波が強まる場面があるので、「α波が多い=リラックスしている」とは単純に言えないんです。

「α波が出る音楽」には何が入っているのか

まず、音楽そのものにα波が入っているわけではありません。
α波は脳の中の電気のリズムで、音ではありません。
仮に8〜12Hzの音を鳴らしたとしても、人間の耳が聞き取れるのはおおむね20Hzから20,000Hzまでなので、そのままでは聞こえない低さです(Range of Human Hearing – Simon Fraser University)。

では「α波音楽」と名乗る曲は何をしているのか。
タイトルや概要欄を見ていくと、だいたい次の2パターンに分かれます。

  • ゆったりした曲に「α波」と名前を付けたもの:中身はピアノやヒーリング系、ジャズなどのスローな曲で、特別な音の加工は説明されていない
  • うなりの音を混ぜたもの:左右の耳にわずかに違う高さの音を流すバイノーラルビートなどで、2つの音の差(たとえば10Hz)をα波の帯域に合わせてある、と説明されている

後者は「脳波が音のリズムに引き込まれる」という考え方が前提になっています。
この前提がどこまで確かめられているかは次の節で見ます。
バイノーラルビートの仕組みと研究はバイノーラルビートの記事で、同じ発想でγ波の帯域を狙う40Hzの音は40Hzガンマ波の記事で詳しく扱っているので、ここでは「α波」という言葉の検証に絞ります。

研究で言えること、言えないこと

音を聴くとα波が増えた、という結果を出した研究は実際にあります。
Costaらは2024年、31人に10分間、5秒ごとに音が切り替わるゆっくりした五音音階の音列、モノラルビート(うなりの音の一種)、無音のそれぞれを聴いてもらい、脳波と主観的なリラックス度を測りました(Costa et al., 2024)。
五音音階の音列では、10分のうち最後の3分間にα帯域を含む遅い脳波が無音より増え、リラックス度の評価も2つの音の条件がどちらも無音を上回っています。

ただ、この結果から「α波音楽は効く」とは読めません。
理由のひとつは、効果が出た音がα波の周波数に合わせた音ではなかったことです。
音の切り替わりのペースは0.2Hz(5秒に1回)で、8〜12Hzとはかけ離れています。
もうひとつは増え方の小ささで、α帯域の差は統計的には有意でも、効果量で見るとごく小さいものでした。
さらに規模の問題もあって、31人に一度だけ10分聴いてもらった実験なので、毎日流したときにどうなるかまでは分かりません。

うなりの音で脳波を狙った帯域に引き込めるか、という前提のほうは、研究の結果がもっと割れています。
Ingendohらは2023年、バイノーラルビートで脳波が変わるかを調べた研究14件を集めて見直しました(Ingendoh, Posny & Heine, 2023)。
引き込みを支持した研究が5件、反対の結果が8件、どちらとも言えないものが1件で、著者らは現時点では結論が出せないとまとめています。

ここまでを整理すると、言えるのは「音を聴いている間にα帯域の脳波が増えた実験はあり、聴いた人がリラックスしたと答えた実験もある」というところまでです。
「この曲を聴けばα波が出る」「α波が出れば勉強がはかどる」は、どちらも確認できませんでした。
とくに後者は、前の節で見たとおりα波が増える理由自体がひとつではないので、α波の量から集中度やリラックス度を逆算するのは無理があります。

α波音楽は勉強に向いているのか

「α波 音楽 勉強」で探している人にとって気になるのは、結局勉強のBGMとして使えるのかどうかですよね。
答えは、α波という看板とは関係なく、曲の中身しだいです。

勉強中のBGMについては、α波よりずっとはっきりした研究があります。
歌詞つきの音楽を流すと読解テストの成績が下がった実験(Perham & Currie, 2014)が代表で、歌詞は言葉なので、文章を読む作業と頭の中で処理の取り合いになる、と説明されています。
α波系の曲はほとんどが歌詞なしのインストなので、この点では勉強向きの側に入ります。
ただしそれは歌詞がないからで、α波の効果とは別の話です。

研究の詳しい整理は作業用BGMの効果を研究から見た記事に、勉強中の音楽の選び方は勉強中に音楽を聴くときの記事にまとめています。

実際に聴くなら

「α波」と名の付いた定番と、そう名乗っていないカフェ系のBGMを並べておきます。
看板が違っても、ゆったりしたインストという中身はかなり近いことが分かるはずです。

Yellow Brick Cinema – Relaxing Music

  • ヒーリング系インスト
  • リラックス寄り
  • 勉強や読書のお供に

「Study Music Alpha Waves」というタイトルで2014年に公開され、再生回数が2億回を超えている、α波系の作業用BGMの代表格です。
概要欄では、α波とバイノーラルビートを使った音楽だと説明しています。
約3時間あるので、勉強のあいだずっと流しっぱなしにできます。

Deep Focus

  • インストゥルメンタル
  • 集中向けのタイトル
  • 勉強の時間に

アルバム名がそのまま「Alpha Waves for Study」で、α波と勉強を組み合わせた、いかにもな看板の1枚です。
曲名を見ると「Deep Work Flow」「Mindful Study Soundscape」のように集中や勉強を意識したものが10曲並んでいます。
ジャンル表記はインストゥルメンタルです。

FM STAR

  • ボサノバとジャズ
  • 滝の水音入り
  • 作業や読書に

「α波」を掲げつつ、曲名を見るとサックスやピアノのジャズが並び、どの曲名にも「(滝)」と添えてあるカフェ寄りの1枚です。
アルバム名は「自然音 α波でリラックス-滝のせせらぎ 作業用、読書用-」で、α波と銘打った曲には、こういう「ゆったりした曲と自然音」の組み合わせもあるという見本になります。

Creamy Panda

  • カフェジャズ
  • 穏やかで落ち着く
  • ひと息つきたい休日に

こちらは「α波」をひと言も名乗っていないカフェジャズで、比べる相手として置いておきます。
アルバム「Calm Cafe Jazz for an Adult Holiday」は、落ち着いたジャズやローファイのインストが10曲入っていて、リラックス用BGMとして求める条件は上の3つとほとんど変わりません。

リラックス用BGMとしての現実的な使い方

ここまでの話をふまえると、α波音楽は「脳波を変える装置」ではなく、「ゆったりしたインストのBGM」として使うのがいちばん無理がありません。
そう割り切れば、選び方も普通のリラックス用BGMと同じです。

  1. 歌詞なしを選ぶ:勉強や読書と組み合わせるなら、前掲のPerham & Currieの結果どおり歌詞なしが無難です。α波系はほとんどがここをクリアしています
  2. 音量は小さめにする:カフェのざわめき程度の音量(70デシベル)で発想系の課題の成績が上がり、それよりうるさい85デシベルでは下がった実験があります(Mehta, Zhu & Cheema, 2012)。音楽ではなく環境音の実験ですが、目安にはなります
  3. 数分は流し続ける:前掲のCostaらの実験では、α帯域の変化が見られたのは10分のうち最後の3分間で、最初の3分間には出ていませんでした。短い曲をつまみ聴きするより、長めのものを流しっぱなしにするほうが実験の条件には近くなります
  4. 「α波」の表記で選ばない:同じリラックス用のBGMでも、α波と書いてあるかどうかで中身の差が出るという根拠は見つかりませんでした。好みのジャンルや音色で選んでかまいません(ここは経験則です)

体調不良や不眠の悩みがあるときは、BGMで何とかしようとせず医療機関に相談してください。
α波音楽は、あくまで気分よく過ごすための背景の音として付き合うのがちょうどいい距離感です。

α波音楽のよくある質問

Q. α波とは何ですか?

A. 脳波のうち、おおむね8〜12Hzの帯域のリズムのことです。
目を閉じて、起きたまま力を抜いているときに後頭部で強く記録され、目を開けたり眠ったりすると弱まります。
記憶の課題に取り組んでいる最中に強まる場面もあるので、リラックスだけの指標ではありません(前掲のKlimesch, 2012)。

Q. α波音楽を聴くと本当にα波が出ますか?

A. 「この曲を聴けば出る」と言える根拠は確認できませんでした。
音を聴いているあいだにα帯域の脳波が無音より増えた実験はありますが(前掲のCosta et al., 2024)、使われた音はα波の周波数に合わせたものではなく、規模も31人の一回きりの実験です。
うなりの音で脳波を引き込めるかについても、研究の結果は割れています(前掲のIngendoh et al., 2023)。

Q. α波音楽は勉強に効果がありますか?

A. α波だから勉強がはかどる、という研究は見つかりませんでした。
α波系の曲は歌詞なしのインストがほとんどなので、歌詞つきの曲よりは読み書きの邪魔をしにくい、とは言えます(前掲のPerham & Currie, 2014)。
ただしそれは歌詞がないことの効果で、α波の看板が付いていないインストでも同じです。

Q. α波音楽を聴いて害はありますか?

A. 普通の音量で聴く範囲なら、ほかのインスト曲を聴くのと変わらないはずです。
大きな音で長時間聴くと耳に負担がかかるのは、どんな音楽でも同じなので、音量は控えめにしておきましょう。

α波という看板との付き合い方

α波は実在する脳波ですが、「α波が出る音楽」という言い方は、研究で確かめられた範囲より一歩先を言っています。
選ぶときは、看板ではなく歌詞の有無や音量、好みの音色を見ましょう。
そうすれば、α波と書いてある曲もない曲も、同じようにリラックス用のBGMとして使えます。

ほかの音の健康法をめぐる話は、バイノーラルビートの記事と40Hzガンマ波の記事で検証しています。
落ち着いた音そのものを探しているなら、作業用の環境音の記事や、カフェBGMアーティスト一覧もどうぞ。

この記事を書いた人

Cafe BGM Playlister 編集部

カフェBGMと作業用BGMの専門メディア「Cafe BGM Playlister」の編集部です。
運営元のレーベルでカフェBGMアーティストの楽曲制作と配信に携わっていて、この記事で紹介したアーティストの一部も当レーベルの所属です。
選曲は、収録曲や再生時間、公開されている情報を編集部が確かめたうえで選んでいます。

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