作業用BGMは効果があるのか|研究でわかっている範囲を整理

「作業用BGMって、本当に効果あるの?」という疑問に、研究ベースで答える記事です。
先に結論を言うと、効くかどうかは作業と音楽の相性次第で、効く場合と逆効果になる場合の両方が実験で確認されています。

とくにはっきりしているのが、「歌詞つきの音楽」と「読み書きの作業」の組み合わせの悪さです。
この記事では、どんな条件で効いて、どんな条件で邪魔になるのかを、実在を確認できた研究だけを引いて整理します。

作業用BGM研究の全体像

まず、この分野の研究をまとめて見た結果から。
Kämpfeらは2011年、背景音楽が人に与える影響を調べた過去の実験を集めて分析しました(Kämpfe, Sedlmeier & Renkewitz, 2011)。
こういう「過去の実験を束ねて全体の傾向を出す手法」をメタ分析と呼びます。

結果が面白くて、全体を平均すると効果はほぼゼロでした。
ところが課題の種類ごとに分けて見ると、読みの作業は邪魔される方向、記憶にも小さめのマイナス、いっぽう気分にはプラス、スポーツの成績にもプラスと、向きがはっきり分かれます。
プラスとマイナスが混ざって、平均するとゼロに見えていただけ、というのが著者らの見立てです。

だから「作業用BGMは効果があるか」という問いは、そのままでは大きすぎます。
「どの作業に、どんな音楽か」まで決めて初めて、研究から答えを引けます。

効く方向の結果が出ている研究

効く方向でよく引かれるのが、音量に関する実験です。
Mehtaらは2012年、環境音の音量を変えて、創造的な発想を要する課題の成績を測りました(Mehta, Zhu & Cheema, 2012)。
カフェのざわめき程度の音(70デシベル)では静かな環境(50デシベル)より成績が上がり、うるさい音(85デシベル)では下がっています。

ただしこれは環境音の実験で、音楽そのものを流したわけではありません。
「無音がベストとは限らない」「ほどよい音量までなら発想系の作業にプラスに働き得る」という範囲で読むのが正確です。

前掲のメタ分析が示した「気分へのプラス」も、効く方向の材料です。
成績が直接上がるという話ではありませんが、退屈な作業を続けるときに気分を保てること自体が、BGMを流す実用上の理由になります。

逆効果になる条件の研究

逆効果の側は、条件がかなり具体的にわかっています。
筆頭が「歌詞つきの音楽で読解が落ちる」という結果です。
Perham と Currie は2014年、読解テストの成績を、静寂、歌詞なしの音楽、好きな歌詞つきの音楽、嫌いな歌詞つきの音楽の各条件で比べました(Perham & Currie, 2014)。
歌詞つきの条件は、好き嫌いに関係なく、静寂と歌詞なしの条件より成績が下がっています。

歌詞の「言語」まで踏み込んだ実験もあります。
2024年に発表された研究では、中国の大学生90人が、中国語と英語の読解テストを、中国語ポップス、英語ポップス、無音の各条件で受けました(Sun et al., 2024)。
正答率がいちばん下がったのは、歌詞の言語が文章の言語と一致した条件で、ふだん音楽を聴きながら勉強しない人ほど影響が大きいという結果でした。
実験の組み合わせは中国語と英語ですが、日本語の文章を読み書きする作業中は日本語詞がいちばん分が悪い、という読み替えが自然でしょう。

記憶系の課題でも似た結果があります。
Perham と Vizard は2011年、数字などを順番どおり覚える課題(系列再生)を、静寂、好きな音楽、嫌いな音楽などの条件で測りました(Perham & Vizard, 2011)。
音楽ありの条件は好き嫌いに関係なく静寂より成績が低く、好きな曲であることは成績を守ってくれませんでした。

なぜ作業によって効いたり邪魔になったりするのか

歌詞が読み書きを邪魔する理屈は、シンプルです。
歌詞は言葉で、読み書きも頭の中で言葉を使うので、耳から入る言葉と処理の取り合いになります。
2024年の研究で「同じ言語の歌詞が最悪」だったのも、言語が同じほど処理が正面衝突する、というこの説明と合っています。

順序記憶の邪魔には、別の説明がつきます。
Perham と Vizard の実験では、同じ音の繰り返し(「3、3、3…」という読み上げ)は成績を下げず、ランダムな数字の読み上げは下げました。
音の「変化」そのものが、順番を覚える処理に割り込むと考えられていて、この現象は無関連音効果(irrelevant sound effect)と呼ばれています。
音楽は変化し続ける音なので、順序を扱う作業ではこちら側に入ります。

効く側の理屈はどうか。
Mehtaらは自分たちの結果を、ほどよい雑音が処理をわずかに妨げることで思考が抽象寄りになり、発想が広がるため、と説明しています。
気分へのプラスは前掲のメタ分析が示したとおりで、言語も順序記憶もあまり使わない作業なら、邪魔される処理が少ないぶん、気分側のプラスが残りやすい。
ここまでの研究を並べると、そう整理できます。

研究を踏まえた作業用BGMの選び方

以上を実践に落とすと、選び方はこうなります。

  1. 読み書き中心の作業なら歌詞なし:資料を読む、文章を書く、コードを書く日は、インスト曲が無難です。歌詞ありをどうしても流したいなら、作業と同じ言語(日本語作業なら日本語詞)だけは外すのが研究の示す線です
  2. 音量はカフェのざわめき程度まで:70デシベルの実験を目安に、うるさいと感じる手前で止めます
  3. 「好きな曲だから大丈夫」を当てにしない:好みが成績を守らなかった結果が2つあります(前掲のPerham & Currie、Perham & Vizard)。好きな曲は休憩用に回すのが賢い使い方です
  4. 単純作業や退屈な作業には気分維持で使う:成績を上げるためというより、気分を保つために流す。気分へのプラスは前掲のメタ分析でも確認された方向です

この条件に合う具体的なチャンネルは、定番の作業用BGMを7つ紹介した記事にまとめてあります。

作業用BGMの効果のよくある質問

Q. 結局、作業用BGMは効果がありますか?

A. 作業と音楽の組み合わせ次第です。
読み書きの作業では歌詞つきの音楽で成績が下がった実験があり、発想系の課題ではほどよい音量の環境音で成績が上がった実験があります。
「歌詞なしを、ほどよい音量で」なら、マイナス側の条件をほぼ避けられます。

Q. 歌詞つきの音楽はやめたほうがいいですか?

A. 読んだり書いたりする作業の最中は分が悪く、とくに作業と同じ言語の歌詞で成績がいちばん下がった実験があります。
休憩中や、言葉をほとんど使わない単純作業なら、問題になりにくいはずです。

Q. 好きな曲なら邪魔になりませんか?

A. 実験の結果は逆でした。
読解でも順序記憶でも、好きな音楽と嫌いな音楽で成績に差がなく、どちらも静寂より下がっています(前掲のPerham & Currie、Perham & Vizard)。

Q. 無音がいちばん集中できますか?

A. 読解や記憶の実験では静寂条件の成績が上位でした。
ただし発想系の課題では静かすぎるより70デシベル程度の音があるほうが良かった実験もあり、無音が常に最善とまでは言えません。
まわりの話し声が気になる環境で、一定のBGMでかき消す使い方も編集部ではよくやります(これは経験則です)。

実際に試すなら

「歌詞なし、変化少なめ、ほどよい音量」をそのまま満たす2つを置いておきます。
どちらも流しっぱなしにできるので、今日の作業からどうぞ。

仕事・勉強が捗る作業用BGMおすすめ

  • インストゥルメンタル
  • テンポ一定で邪魔しない
  • 長時間の事務作業に

テンポの揃ったインスト曲が続くチャンネルです。
歌詞がなく曲調の起伏も小さいので、この記事で見てきたマイナス条件をきれいに避けられます。

Cafe Music BGM channel

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  • ボサノバ
  • 明るめの生演奏
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ジャズとボサノバの生演奏を24時間配信している定番チャンネルです。
歌詞のない演奏が流れ続けるので、曲選びに戻る必要がありません。

カフェ系や作業用BGMのアーティストはカフェBGMアーティスト一覧にもまとめています。

この記事を書いた人

Cafe BGM Playlister 編集部

カフェBGMと作業用BGMの専門メディア「Cafe BGM Playlister」の編集部です。
運営元のレーベルでカフェBGMアーティストの楽曲制作と配信に携わっていて、この記事で紹介したアーティストの一部も当レーベルの所属です。
選曲はすべて、編集部が実際に作業しながら聴き比べて選んでいます。

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