「カフェジャズ」で検索すると、プレイリストや配信は山ほど出てくるのに、「そもそもカフェジャズって何?」に答えてくれるページは案外見つかりません。
実は、ジャズの教科書を開いても、カフェジャズという章は見当たりません。
カフェジャズとは、特定の音楽ジャンルの正式名称ではなく、カフェで流すのに向く落ち着いたジャズをまとめて呼ぶ通称です。
この記事では、この言葉が指している音の範囲、定番の3スタイル、曲調の共通点、使いどころまでを解説します。
「解説はいいから聴けるものをくれ」という人は、カフェジャズBGMおすすめ6選へ先にどうぞ。
カフェジャズとはどんな言葉か
まず位置づけをはっきりさせておきます。
カフェジャズは、音楽理論や音楽史の用語ではありません。
「カフェで流すのに向く、落ち着いたジャズ」をまとめて呼ぶ言い方として定着した、いわば聴き手の側から生まれた棚の名前です。
だから「この曲はカフェジャズか否か」を判定する正式な基準もありません。
実際、カフェジャズの名前がついたプレイリストの中身はけっこうばらばらで、生演奏のジャズもあれば、ボサノバ寄りの曲も、ビート入りのローファイジャズも一緒に流れています。
では、いわゆる本格的なジャズと何が違うのか。
曲そのものの違いというより、聴かせ方の違いです。
ジャズ鑑賞では演奏が主役で、聴き手はソロの一音一音を追いかけます。
カフェでは主役が会話とコーヒーの時間に移るので、音楽には「そこにいるのに邪魔をしない」ことが求められます。
この条件に合う静かめのジャズを集めた棚が、カフェジャズというわけです。
だから、同じアルバムが両方の顔を持つこともよくあります。
たとえばビル・エヴァンス・トリオの「Waltz for Debby」は、じっくり聴き込む名盤としても、カフェジャズの定番としても流されている1枚です。
名盤かBGMかは曲が決めるのではなく、聴き方が決めます。
カフェジャズの定番3スタイル
正式な区分がないとはいえ、カフェジャズとして流れている音は、だいたい次の3系統に分かれます。
おすすめ6選の記事にも、この3系統の代表格が入っているので、聴きながら確かめられます。
ピアノトリオ系
ピアノとベースとドラムの3人編成で演奏されるジャズです。
編成が小さいぶん音に余白があって、音量の起伏も控えめなので、静かな店内でもうるさくなりません。
カフェジャズの中では、いちばん「喫茶店らしい」音だと思います。
定番は先ほどの「Waltz for Debby」で、ジャズクラブでのライブ録音のため、グラスの音や客の話し声がかすかに入っています。
ピアノ中心のBGMをもっと探したい人には、ピアノ作業用BGMの記事もあります。
ボサノバ混じり
ジャズにボサノバのギターの刻みが混ざった系統です。
ゆったり揺れるリズムのおかげで、ピアノトリオより明るくて軽い空気になります。
昼間のカフェでよく耳にするのはこちらの系統で、「Getz/Gilberto」のような歌入りの名盤も、ささやくような歌い方なので音量を控えめにすればBGMとしてなじみます。
ボサノバ側から入りたい人はボサノバカフェBGMのまとめをどうぞ。
ローファイジャズ
ジャズの上に、ヒップホップ由来のゆったりしたビートとレコードノイズを重ねた系統です。
生演奏系と違って淡々としたビートが下に敷かれているので、作業のリズムを保ちたいときに向いています。
3系統の中ではいちばん新顔で、YouTubeの24時間配信の文化と一緒に広まった、とよく説明されます。
ローファイそのものの解説はLoFiの解説記事に書いています。
カフェジャズの曲調に共通する3つの特徴
系統は違っても、カフェジャズと呼ばれる曲はだいたい次の3点を満たしています。
逆に言えば、この3点がプレイリストに入るかどうかの実質的な選抜基準です。
- テンポがゆっくりで一定:急に走ったり止まったりしないので、曲の展開に注意を持っていかれずに済みます
- 音数が少ない:楽器の数もフレーズの密度も控えめで、音の隙間が会話や思考の入る余地になります
- 歌がない、あってもささやき声レベル:歌詞は言葉なので、会話や読み書きと頭の中で取り合いになります
3つ目の「歌なし」には裏づけがあって、歌詞つきの音楽で読解テストの成績が下がった実験があります(Perham & Currie, 2014)。
インストゥルメンタル中心のカフェジャズなら、この取り合いがそもそも起きません。
ボサノバ混じりの歌入り曲だけは例外ですが、ささやき声レベルの歌なら会話の背景に置けるというのが編集部の実感です。
カフェジャズの聴き方と使いどころ
聴き方のコツはひとつだけで、音量を上げすぎないこと。
カフェのざわめきくらいの音(70デシベル)だと創造的な課題の成績が上がり、うるさすぎる音(85デシベル)だと下がったという実験があります(Mehta, Zhu & Cheema, 2012)。
音楽そのものの実験ではありませんが、「ざわめき程度まで」がひとつの目安になります。
意識が音楽のほうに向いたら、上げすぎのサインです。
使いどころは、時間帯で系統を替えるのが簡単です。
朝から昼はボサノバ混じりで軽く、夕方からはピアノトリオでしっとり、夜の作業はローファイジャズで淡々と。
編集部の使い分けはこんな感じです。
3系統の分類からは少し外れますが、夕方の部にちょうど合う音源をひとつ貼っておきます。
朝カフェ作業部屋
朝を名乗りつつ、夕方から夜のための静かなジャズも手がけている名義です。
アルバム「Calm Jazz Background Music to Help You Concentrate in the Evening Cafe」は、その名のとおり夕方のカフェで集中したいとき用の落ち着いたジャズで、一日の締めの作業にちょうどなじみます。
カフェジャズのよくある質問
Q. カフェジャズとはどんな音楽ですか?
A. カフェで流すのに向く、落ち着いたテンポのインストゥルメンタル中心のジャズを指す通称です。
正式なジャンル名ではなく、ピアノトリオ系、ボサノバ混じり、ローファイジャズあたりがこの名前でまとめて呼ばれています。
Q. カフェジャズと普通のジャズはどう違いますか?
A. 曲の違いというより、聴かせ方の違いです。
演奏を主役として聴き込むのがジャズ鑑賞、会話や作業の背景に置くのがカフェジャズという使い分けで、同じ名盤が両方の場面に登場します。
Q. カフェジャズはどこで聴けますか?
A. YouTubeの生演奏系チャンネルなら無料で、SpotifyやApple Musicにもアルバムやプレイリストが揃っています。
編集部が系統別に選んだ6つをカフェジャズBGMおすすめ6選にまとめているので、そこから流すのが早道です。
まずどの系統から流すか
使い分けの軸は、音数と明るさです。
いちばん静かに流せるのがピアノトリオ系、空気を明るくするのがボサノバ混じり、作業のリズムを刻みたい日がローファイジャズ。
この軸だけ持ち帰ってもらえれば、カフェジャズ選びは大きく外しません。
具体的に何を流すかはカフェジャズBGMおすすめ6選で系統別に紹介しているので、この記事で当たりをつけた系統から試してみてください。
ジャズ以外も含めたカフェミュージック全体の見取り図はカフェミュージックの解説記事に、夜の時間帯の選曲は夜カフェBGMのまとめにあります。
アーティストから探したい人はカフェBGMアーティスト一覧をどうぞ。
この記事を書いた人
Cafe BGM Playlister 編集部
カフェBGMと作業用BGMの専門メディア「Cafe BGM Playlister」の編集部です。
運営元のレーベルでカフェBGMアーティストの楽曲制作と配信に携わっていて、この記事で紹介したアーティストの一部も当レーベルの所属です。
紹介するチャンネルや音源は、編集部が実際に聴き比べたうえで選んでいます。
