勉強中に音楽を流すのはアリかナシか。
先に答えを言うと、科目と使い方次第です。
暗記はナシ寄り、読解やレポートは「歌詞なし」限定の条件つき、手を動かす演習や気分づくりはアリ寄りと、場面によって答えが変わります。
この記事で扱うのは「いま自分がやる勉強に、音楽を流していいのか」の判断だけです。
流すと決めたあとの具体的なチャンネルやアルバムは勉強用BGMおすすめ6選に、勉強に限らない作業全般の研究の全体像は作業用BGMの効果を解説した記事に分けてあるので、詳しくはそちらをどうぞ。
音楽がナシ寄りになる勉強
ナシ寄りの筆頭は暗記です。
ものを順番どおり覚える記憶課題で、音楽を流した人たちは無音の人たちより成績が下がり、しかも好きな曲と嫌いな曲で下がり方に差がなかった、という実験があります(Perham & Vizard, 2011)。
英単語や年号を覚えるあいだ、頭の中ではその対象を何度も唱え直していて、音楽は止まらずに変化し続ける音なので、この唱え直しに横から割り込みます。
だから単語帳や年表を開いている時間に限っては、お気に入りの1曲であってもナシと考えるのが手堅い判断です。
次にナシ寄りなのが、歌詞のある曲を流しながらの読解です。
読解テストの成績を無音、歌詞なし、歌詞ありの各条件で比べたら、歌詞ありだけが好き嫌いに関係なく低かった、という実験があります(Perham & Currie, 2014)。
文章を読む処理と歌詞を聞き取る処理はどちらも頭の中の言語の道具を使うので、同時に走らせると、教科書の一文と歌の一節が処理を奪い合います。
歌詞の言語まで踏み込んだ実験だと、この分の悪さはもう一段はっきりします。
読んでいる文章と同じ言語の歌詞がいちばん正答率を下げて、ふだん音楽を聴きながら勉強しない人ほど影響が大きかった、という結果です(2024年の研究)。
実験の組み合わせは中国語と英語ですが、現代文を読みながらのJ-POPは、この実験でいちばん成績が落ちた条件にかなり近い組み合わせと言えます。
音楽がアリ寄りになる勉強
逆に、計算ドリルや漢字の書き取りのような、手が覚えるタイプの反復演習はアリ寄りです。
ただ、この領域は読解ほど実験が揃っていないので、ここから先は編集部の経験則になります。
反復演習は途中で気分が切れることがいちばんの敵で、テンポの揃ったインストを小さく流しておくと、手が止まりにくくなります。
「無音が常にベストとは限らない」ことを示す材料もあります。
カフェのざわめき程度の音(70デシベル)では、静かな環境(50デシベル)より創造的な課題の成績が上がり、うるさい音(85デシベル)では下がった、という実験です(Mehta, Zhu & Cheema, 2012)。
これは環境音の実験で音楽そのものではありませんが、自由研究の構想やレポートのネタ出しみたいな発想寄りの時間なら、ほどよい音がプラスに働き得る、という範囲では参考になります。
もうひとつのアリは、勉強を始めるきっかけとしての使い方です(これも経験則です)。
やる気が出ない日に「この1曲のあいだに机に着く」と決めて流すと、始動のハードルが下がります。
流しっぱなしにするかどうかは、始まってから科目に合わせて決めれば十分です。
科目別の判断早見表
ここまでの話を、科目と音の組み合わせで表にまとめます。
◎がいちばん無難で、×は実験で成績低下が出ている組み合わせです。
| 勉強の種類 | 無音 | 歌詞なしBGM | 歌詞ありBGM |
|---|---|---|---|
| 暗記(英単語、年号、古文単語) | ◎ | △ | × |
| 読解(現代文、英語長文、教科書) | ◎ | ○ 遅めの曲を小さく | × |
| レポート、作文 | ◎ | ○ 遅めの曲を小さく | × |
| 計算、問題演習 | ○ | ○ | △ |
| やる気が出ない日の始動 | △ | ◎ | ○ 始動の1曲だけなら |
暗記と読解の行は前掲の実験(Perham & Vizard、Perham & Currie、2024年の研究)にもとづく評価です。
レポートの行は読解の結果からの読み替え(書く勉強も頭の中で言葉を使うため)、下2行は編集部の経験則です。
迷ったら「言葉を読み書きする科目ほど音に弱い」と覚えておけば、この表がなくても判断できます。
それでも流すなら、この4条件
表で○が付いた場面で流すときも、条件を外すとナシ側に転びます。
守るのはこの4つです。
- 歌詞なしを選ぶ:とくに教材と同じ言語の歌詞は最初に外します。読解の成績低下は歌詞あり条件で出ていて、同じ言語の歌詞がいちばん下がりました(前掲のPerham & Currie、2024年の研究)
- テンポは遅め、音は控えめ:歌詞のないインストでも、テンポが速くて音量が大きい条件では読解の成績が下がった実験があります(Thompson, Schellenberg & Letnic, 2012)。同じ実験でも、遅く控えめな条件ならそこまでの悪化は出ていません
- 音量はざわめき程度が上限:85デシベルのうるさい音では創造的な課題でも成績が下がっています(前掲のMehta, Zhu & Cheema)。「うるさいかも」と思った時点で下げるのが目安です
- 暗記パートに入ったら止める:同じ勉強時間の中でも、単語帳に切り替えた瞬間からは無音に戻します(前掲のPerham & Vizard)
この4条件をそのまま満たすアルバムを、1枚だけ置いておきます。
仕事・勉強が捗る作業用BGMおすすめ
テンポの揃ったインスト曲をそろえているアーティストです。
アルバム「Concentrate On Studying in a Quiet Environment ~Recommended BGM Collection~」は名前のとおり静かな環境づくりに寄せた選曲で、歌詞なし、起伏少なめ、控えめな音づくりと、この記事の条件をそのままなぞれます。
勉強中の音楽のよくある質問
Q. 音楽ありのほうが捗っている実感があります。気のせいですか?
A. 気のせいと言い切る根拠はありませんが、実感と点数は別々に測らないとわかりません。
少なくとも暗記の実験では、好きな曲を流した人たちの成績も無音より下がっていました(前掲のPerham & Vizard)。
実感を活かすなら、演習や始動のような音に強い場面に寄せるのがおすすめです。
Q. 洋楽なら歌詞つきでも大丈夫ですか?
A. 日本語の教材を読むあいだなら、日本語詞よりはましと読める結果があります。
読んでいる文章と同じ言語の歌詞がいちばん成績を下げた実験です(前掲の2024年の研究)。
ただし同じ実験で、歌詞つきはどの言語でも無音より成績が下がっているので、あくまで「まし」止まりです。
読解の日は歌詞なしにしておくのが無難です。
Q. カフェだと勉強がはかどる気がするのはなぜですか?
A. 発想系の課題に限れば、ざわめき程度の音で成績が上がった実験があります(前掲のMehta, Zhu & Cheema)。
ただしこれは環境音の実験で、暗記や読解も同じように上がるという結果ではありません。
カフェに持ち込むなら、問題演習やレポートの構想あたりが向いています。
Q. 家のリビングがうるさいので、音楽でかき消すのはアリですか?
A. その使い方は編集部もよくやります(これは経験則です)。
変化の少ないインストを、生活音がまぎれる程度の小さめ音量で流してください。
無音にこだわって生活音に気を取られるくらいなら、一定の音でならしてしまうほうが現実的です。
迷ったときの判断のしかた
「暗記はナシ、読解とレポートは歌詞なし限定、演習と始動はアリ」。
この一行と、うるさいと感じたら下げるという音量の目安だけ持ち帰れば、あとは科目ごとに機械的に判断できます。
流すと決めた日の具体的なチャンネル選びは勉強用BGMおすすめ6選を、勉強以外の仕事や作業での効果は作業用BGMの効果を解説した記事をどうぞ。
カフェ系のアーティストはカフェBGMアーティスト一覧にまとめています。
この記事を書いた人
Cafe BGM Playlister 編集部
カフェBGMと作業用BGMの専門メディア「Cafe BGM Playlister」の編集部です。
運営元のレーベルでカフェBGMアーティストの楽曲制作と配信に携わっていて、この記事で紹介したアーティストの一部も当レーベルの所属です。
選曲はすべて、編集部が実際に作業しながら聴き比べて選んでいます。
